現地リポート「国宝・十一面観音像の魅力」│「旅の友」web版【東日本版】 │クラブツーリズム

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「旅の友」東日本版9月号に掲載。
※中部・東海版、西日本版は、記事内容が異なります

連載企画　今月のテーマステキな好奇心　国宝・十一面観音像の魅力

今回、旅の友編集部が同行したのは、京都・奈良・滋賀・大阪に点在する国宝・十一面観音像を訪ねる旅。仏像の中でも極めて美しいとされる十一面観音像。幽玄な山寺や田園風景の中にたたずむ古刹に安置された、美仏めぐりの旅の様子をご紹介します。

国宝十一面観音像とは？病気治癒などの現世利益を祈願するため、奈良時代から信仰を集めた菩薩像。本体の顔以外に、10ないし11の顔を持ちます。国宝に指定されている七体は、中でも極めて完成度が高く、その神々しさに多くの人々が魅了されてきました。

向源寺（こうげんじ）

聖林寺（しょうりんじ）

道明寺（どうみょうじ）

観音寺（かんのんじ）

法華寺（ほっけじ）

室生寺（むろうじ）

向源寺（滋賀県／平安時代）

国宝・十一面観音像の中でも屈指の傑作。八頭身の立ち姿は優しくしなやかで、腰の括れが躍動感を与えます。大腿部の豊かな肉付きや、均整の取れた体躯も見どころですが、頭部裏側に隠された「暴悪大笑面」は必見です。

聖林寺（奈良県／奈良時代）

奈良時代末期の作とされる十一面観音像は、概形を一木から彫り出し、乾漆を厚く盛り上げて整形された木心乾漆造（もくしんかんしつづくり）。ときにミロのヴィーナスと比較されるほどの美しさを持ちます。

道明寺（大阪府／平安時代）

観音寺（京都府／奈良時代）

同時代に製作されたとされる聖林寺の十一面観音像と同じ木心乾漆造。天平仏特有の華やかさを湛え、若々しさと神々しさを兼ね備えています。

南山城の古刹・観音寺

法華寺（奈良県／平安時代）

多くの功績を残したとされる光明皇后を模して造られたという平安時代屈指の美仏。小柄ながら右足をゆるやかに踏み出そうとする立ち姿は躍動感を感じさせ、まさに「逍遥（しょうよう）」といった趣。光背は他にほとんど例を見ない珍しいもので、まだ開かぬ蓮の花と葉を表しています。

比丘尼御所（びくにごしょ）とは？もともと仏教伝来の頃より尼寺は存在したが、寺院制度が整えられた江戸時代に皇女・皇女が持する尼寺を「比丘尼（びくに）御所」と呼ぶようになりました。光明皇后をモデルにした十一面観音を安置する法華寺は、代表的な比丘尼御所です。

室生寺（奈良県／平安時代）

平安時代に造られたとされる十一面観音像を安置。ふっくらとした丸顔にはれぼったいまぶた、赤く紅を塗った唇には、少女のようなあどけなさと官能的な艶やかさが同居する不思議な魅力があります。

六波羅蜜寺（京都府／平安時代）

12年に１度しか開帳されない秘仏。疫病が蔓延する当時の京都で、空也上人がこの像を車に乗せて引きながら歩き、念仏を唱えて人々を救ったとされます。像高250センチを超す一木造の巨像。人々を救って歩いた空也上人の人柄を表すかのような、温和な表情をたたえます。