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連載企画 今月のテーマ ステキな好奇心 国宝・十一面観音像の魅力
旅のアルバム帳 2013年6月7日〜9日取材 日本美術の粋を集めた京都・奈良・大阪・滋賀の国宝めぐり

「旅の友」東日本版9月号に掲載。
※中部・東海版、西日本版は、記事内容が異なります

旅の友web版9月号

「旅の友」Web版9月号

旅のアルバム帳 2013年6月7日〜9日取材

日本美術の粋を集めた京都・奈良・大阪・滋賀の国宝めぐり

歴史薫る古都・奈良を起点に、8つの古刹を訪ね歩いた今回の旅。日本美術の粋を集めたような観音像の美しさに酔い、神社仏閣の歴史に思いを馳せる。そんな好奇心に満ちた旅の様子をお届けします。

室生寺の鎧坂(よろいざか)にて。奥には十一面観音像を安置する金堂が見えます

1日目

新緑につつまれた古刹で十一面観音と対面

清流に架かる朱塗りの太鼓橋をわたり、室生寺の境内に向かう旅仲間

仁王門をくぐって境内を進めば国宝・十一面観音とご対面。心が高鳴ります。

鮮やかな朱色をした室生寺の仁王門
吉池慶太さんは十一面観音像をオペラグラスでじっくり拝観降るような新緑の木々がこけら葺きの屋根を覆います

朱塗りの橋を渡って室生寺へ  7体ある国宝の十一面観音像のうち、6体を拝観する今回の旅。はじまりは、奈良を代表する山寺の室生寺です。バスを降りて朱塗りの太鼓橋を越え、室生寺の境内へ。鎧坂(よろいざか)と呼ばれる坂を上りきれば、十一面観音像が安置された金堂はもう目の前。数ある仏像の中でも「美仏」とうたわれる観音像とのご対面を前に、旅仲間の胸も高まります。 オペラグラスで仔細に拝観していたのは、親子でご参加の吉池邦子さんと慶太さん。「美術館でやっていた仏像展に感動して、仏教美術に興味を持ちました。堂宇の中のお姿はとても美しいですね」(邦子さん)

500段もの階段を登り奥の院へ  仁王門から数えておよそ700段の階段を上ったところに、室生寺の奥の院があります。「せっかくだから行ってみよう」と足を延ばしたのは、35年前に奈良にお住まいだったという神谷栄一郎さん、康子さんご夫妻。「室生寺や長谷寺は、季節ごとによくめぐっていました。でも、これほどゆっくり仏像を拝んだことはありませんでした」(康子さん)と、改めて心打たれたよう。栄一郎さんも感慨深げに、かつての風景と重ね合わせていました。

500段もの階段を登り奥の院へ  仁王門から数えておよそ700段の階段を上ったところに、室生寺の奥の院があります。「せっかくだから行ってみよう」と足を延ばしたのは、35年前に奈良にお住まいだったという神谷栄一郎さん、康子さんご夫妻。「室生寺や長谷寺は、季節ごとによくめぐっていました。でも、これほどゆっくり仏像を拝んだことはありませんでした」(康子さん)と、改めて心打たれたよう。栄一郎さんも感慨深げに、かつての風景と重ね合わせていました。

フェノロサが驚嘆した観音像  室生寺を後にした一行が次に向かったのは、かつてアメリカの哲学者フェノロサが驚嘆したという十一面観音像を安置する聖林寺。奈良盆地を見おろす小高い丘の上からは、箸墓古墳や三輪山を望みます。観音堂の中で十一面観音像を前に説明を聞く旅仲間の表情は、興味深い話を聞き漏らすまいと、どれも真剣そのもの。たっぷりとられたはずの拝観時間も、あっという間に過ぎていきました。

廃仏毀釈を乗り越えた天平の美仏

俗界と聖域を隔てる「大界外相」の文字奈良盆地の牧歌的な風景を望みます
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2日目

歴史上の人物ゆかりの名刹めぐり

十一面観音像を前に住職の話を聞く旅仲間菅公御作「十一面観世音菩薩」の文字が彫られた石碑
石井洋子(左)さんと倉永久子さんは住職といっしょに記念撮影 道明寺では住職が旅仲間の質問にていねいに答えてくれました。国宝の十一面観音像を目の前で拝観

道明寺では住職がていねいに解説  ツアー2日目は道明寺、蟹満寺、観音寺、唐招提寺の4カ寺をめぐります。最初に訪れた尼寺の道明寺では、住職が十一面観音像の歴史やお寺の歴史をじっくりお話ししてくださいました。十一面観音拝観後は、境内の建造物や石碑の 解説も。住職と一緒に記念撮影した石井洋子さんと倉永久子さんは「住職のお人柄に、お寺の格の高さを感じますね」と喜びの表情を浮かべていました。

蟹満寺の歴史を紙芝居風に  次に訪れたのは、名前に「蟹(かに)」の字が入る珍しいお寺、蟹満寺。沢ガニを助けた少女の家に蛇の化身が襲いかかり、それをたくさんの沢ガニが身を挺して守るという「カニの恩返し」の伝説が残るお寺です。お寺近くの小川を眺めながら、「なんだか沢ガニが出てきそうだねえ」とは剣持昭義さんの言葉。お寺に飾られた絵を使った紙芝居風の住職のお話が、いつまでも耳に残りました。

のどかな観音寺と大伽藍の唐招提寺  この時期はちょうど田植えが終わり、少しずつ緑の稲が田んぼから顔を出していました。まもなくあたりは緑のじゅうたんとなり、一帯に稲の香りが漂うことでしょう。そんなのどかな風景の中に点景のようにたたずむのが観音寺です。「化仏(けぶつ)も残っているし傷も少なくてきれいだね」とやや専門的な話をされたのは、石井明さん。化仏とは仏像の宝冠に載った小さな仏像のことで、十一面観音像は化仏が10〜11体載っています。「美術館なら多くの仏像がずらりと並ぶけれど、ひとつのお寺に一体しかない仏像を人々が大切にしている様子に、あまり信心深くなくても思わず手を合わせたくなりますね」(石井さん) 一方、本日最後のお寺となる唐招提寺は、大伽藍の内にいくつもの国宝を有する律宗の総本山。「こんなに素晴らしい体験はめったにできませんよ」と、おひとり参加の金子花子さんは、地図を片手に特別御開帳の鑑真和上像や東山魁夷の障壁画、新宝蔵などを積極的に拝観していました。

観音寺には、周囲ののどかな風景からは想像も付かない、華やかで洗練された美仏が安置されています。

気持ちのよい風が吹く参道
天平仏特有の華やかさを持つ観音像
昼食に立ち寄った食事処「うおも」の玄関にはカエルの石像が
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3日目

好奇心が生み出す旅の楽しみ方

締めくくりは法華寺と向源寺の観音像 最終日は光背が特徴的な観音像を安置する法華寺と、十一面観音の中でも傑作とされる向源寺の観音像を拝観。「今回の旅で出会った観音像は、いずれも世界の人々に知ってほしい日本の文化だと思います」と語るのは、遠西勢津子さん。友人の石井洋子さんや倉永久子さんらとともに「飛鳥の会」という仲間同士の会を作り、奈良を中心に旅をしたり、共に学んだりしているのだといいます。「学び」が次の旅の目的となる。好奇心が生み出す旅の楽しみ方が、ここにありました。

最後のお寺、向源寺を訪れた一行手水舎(ちょうずや)では本物のカエルがお出迎え
好きな世界に3日間とっぷり浸かり、誰もが満足げな表情

クリア

決定