クラブツーリズム TOP>「旅の友」Web版【東日本版】 > 旅のアルバム帳「世界遺産の島を探検!生命あふれる小笠原へ」
2011年、ユネスコ世界自然遺産に登録された小笠原諸島。有史以来、一度も大陸と地続きになったことがなく、さらに1830年代まで無人島であったことから、この島にしかない固有種が多く残っています。今回は小笠原で最大の島「父島」に渡り、海と森、両方のスケールを体感する6日間の旅をリポートします!
現在、本島から小笠原諸島へ渡る手段は、東京・竹芝桟橋と父島・二見港を結ぶ定期船「おがさわら丸」のみです。その距離は約1000キロ、時間はなんと25時間30分!東京湾から見える街並みやレインボーブリッジに別れを告げ、太平洋の大海原を進んでいきます。
正午、旅仲間たちは父島に到着。昼食は各自で自由に楽しみました。父島の名物は漬けマグロの寿司「島寿司」や日本で小笠原しか漁が行われていないというウミガメの料理。「亀の煮付け」を食した西村千枝子さんは「魚とも肉ともいえない不思議な味。でもさっぱりしていておいしい」とのこと。普段はなかなか食べられない島ならではの味を満喫していました。
次は三日月山頂上にある展望台へ。ここは島の人々にも人気の場所で、父島の西側の海が視界いっぱいに広がり、すぐそばに浮かぶ西島を望むことができます。キラキラと輝く海面を眺めていると、「見て、あそこ!」という声。指差す方向に見えたのは、なんとクジラの潮吹き!至近距離とはいきませんが、海面に霧が上がっているのが肉眼ではっきりと見えました。「まさかこんな山の上でクジラが見られるとは思いませんでした」と、宮内康明さんも笑顔。小笠原の海の豊かさを早くも感じるひとときでした。
夜は自由行動。「旅の友」編集部は夜行性の生き物たちに出会う「ナイトツアー」にご一緒しました。暗闇に包まれた小港海岸では、天然記念物の「ムラサキオカヤドカリ」を、木々が生い茂る亜熱帯農業センターでは同じく天然記念物の「オガサワラオオコウモリ」を発見。天然記念物を間近に見るという貴重な体験に、旅仲間たちからも感動の声が上がっていました。
昨日展望台から見たクジラをぜひ間近で……と期待を膨らませながら、旅仲間たちはボートに乗り込み、沖へと向かいました。冬から春にかけてのこの時季、小笠原では繁殖のためにやってくるザトウクジラの姿を見ることができます。クジラは海に深く潜る際、海面に「リング」と呼ばれる丸い跡を残すため、この「リング」がたくさんある場所は、クジラが近くにいる証拠です。ボートのエンジンを止め、慎重に進み始めた瞬間、「いた!あそこだ!」との声。左から右へ、霧を上げながら移動し、最後には黒い大きな背中がザブン、その後を小さな尻尾が潜っていきました。船長によると、母子のザトウクジラとのこと。「一瞬だったけど、仲良しの姿がちゃんと分かったよ」とクジラを楽しみにしていたという結城勇夫さんも大興奮の様子でした。
島滞在3日目は陸の大自然へ。生態系保全区域の入林資格をもつガイド・吉井嘉子さんと一緒に、珍しい植物を探しに出かけました。向かったのは世界遺産地区の森「サンクチュアリ」。一歩森に足を踏み入れると、「あの脇に生えている木は、固有種のマルハチ。その下にある白いじゅうたんのようなコケが、ムニンシラガゴケ。これも固有種です」と吉井さんが説明するように、そこは固有種のオンパレード。どれも島の独自の生態系に合わせて進化した植物です。「この島で生きるために進化したのが形ではっきり分かって面白いですね」と、橘召子さんも熱心にメモを取りながら、ガイドの話に耳を傾けていました。
5日目の出港までは自由行動。「旅の友」編集部は、最終日も元気に歩く旅仲間と一緒に、父島北部の旭山へ向かいました。いたるところに生育する固有種の植物を観察しながら山道を登り、標高267メートルの山頂に到着!良い汗をかいた皆様は涼しい風を浴び、眼下に広がるコバルトブルーの海を名残惜しそうにずっと眺めていました。 「おがさわら丸」の汽笛が鳴ると、いよいよ父島ともお別れの時間。港では島中の人々が集まり、太鼓の演奏で見送りをしてくれます。船が港を離れてからも、ボートで追いかけながら「行ってらっしゃい!」と声をかけてくれる島の皆さん。それに手を振りながら「ありがとう、行ってきます」と笑顔で応える旅仲間たち。別れのときも「さようなら」と言うのが惜しい、そんな魅力がある父島での旅を終え、再び船で約1日、東京への帰路につきました。