クラブツーリズム TOP>「旅の友」Web版【東日本版】> 科学で旅はもっとおもしろい。 第10回 温浴と自律神経
探究心や好奇心は、いつも胸に抱いていたいもの。
旅のあれこれを科学的にひも解いて、旅をもっと楽しもう。
寒さが増すこの季節、温泉などに出かけて湯につかるのは、至福のひとときではないだろうか。体を清潔に保つだけでなく、疲れた体をほぐし、ときにはコミュニケーションの場ともなる。温かい湯につかるのは体に良いイメージがあるが、実際にどのような面で良いのだろうか。温浴の効果について探ってみよう。
温浴が体にもたらす効果のひとつは、自律神経を整えること。自律神経は、消化・呼吸・体温調整・分泌・排せつなど生命活動に不可欠な神経。激しい運動や感動した時の活動的な状態を作るアクセルのような交感神経と、安静時や睡眠時のリラックスした状態を作るブレーキのような副交感神経の相反する2つの神経が、交互にほどよく働くことで自律神経が正常に働く。
自律神経を乱す要因は、精神的なストレス、身体的なストレス、体内時計のずれ(昼夜逆転)、更年期障害などがあり、一度バランスが崩れると、不安や緊張感の増大、過呼吸、吐き気、動悸、不眠、神経性胃炎……など自律神経がつかさどるあらゆる器官に不調が訪れる。
足をぬるま湯で温めるだけでも副交感神経が刺激され、リラックス効果が高まる
自律神経を整えるには、質の良い睡眠が不可欠だが、入浴がその手助けになる。体を温め体温が上がると、交感神経が活性化。入浴後、体温が徐々に下がる過程で副交感神経が刺激され、眠気を感じ心地よい睡眠へと誘われていく。また、体温が上がると血行がよくなり、老廃物や疲労物質が排せつされやすくなるので、疲れがとれ快眠に繋がる。
自律神経を整える効果的な入浴方法は、急激に体が熱くならないようぬるめの湯に入ること。熱い湯は交感神経を過度に刺激してしまうが、ぬるめの湯は心臓や血管への負担が少なく、筋肉が緩み、リラックスした状態になる。
自宅でのお風呂もいいが、温泉は喧騒から離れてリラックスする心理的な作用も大きい。自然の景観を楽しみ、日々の仕事から解放されるだけでストレス解消になる。寒さが続くこの季節、体を温めることに気を配りたい。
お風呂といえば湯船につかる入浴が中心だが、温泉地などに行くと、特殊な入り方をするところも少なくない。泥湯、砂風呂、蒸気浴や岩盤浴など、お湯につかるのとは違った楽しみ方がある。また、海外の温泉地では入浴より、温泉を飲む飲泉やサウナなどの蒸気浴、温泉に生息する魚(ドクターフィッシュ)を活用している例もある。
温泉成分が含まれた泥の湯。泥の細かい粒子が肌に浸透し、地肌の皮脂を取り除くことから、美肌効果や保湿効果が期待できるとされる。国内では秋田県の泥湯温泉や大分県の泥湯温泉など蒸気が上がる指宿の砂浜 | 泥湯の泉源のイメージ |
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温泉の熱や蒸気で温められた砂で体を温めるふかし湯の一種。砂の中に横たわり、砂中の蒸気熱と砂の圧力で発汗などの温熱効果を得る。砂の掘り下げにより、温度の調整をする。国内では鹿児島の指宿温泉や大分県の別府温泉など黄土と薬石を積んだドーム型の汗蒸幕 | 蒸気が上がる指宿の砂浜 |
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韓国の伝統的な高温のドーム型サウナ。松の木などを燃やして温められたドーム型サウナは上層部が700〜800℃、下層部でも90〜150℃と高温のため、麻の布を頭からかぶり、数分間過ごす。休息をとりながら数回繰り返し、発汗を促す | 松の木を燃やして、ドーム内を温める |