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クラブツーリズム TOP > 「旅の友」web版【西日本版】 > 科学で旅はもっとおもしろい。 第11回 巨樹
探究心や好奇心は、いつも胸に抱いていたいもの。
旅のあれこれを科学的にひも解いて、旅をもっと楽しもう。
国土の約7割が森林で覆われ、世界でトップクラスの森林国といえる日本。木の生育環境に恵まれ、多種多様な樹種があるのも特徴だ。中には長い歳月をかけて大きな木に育つものも少なくない。
大きな木ときいて、屋久島の縄文杉が頭に浮かぶ方も多いのではないだろうか。縄文杉は一説に樹齢2000年以上、幹周約16m、高さ約25mの屋久島を代表する巨樹。一般的なスギの寿命は500年なので、縄文杉がいかに偉大な存在であるかが想像できる。今回は巨樹について探ってみよう。
日本で巨樹になる種は、スギ、ケヤキ、クスノキ、イチョウなど。最も高い木は京都府の「花はな脊せ の三本杉」のうちの1本とされ約62・3m。スギは日本では一番高く成長する種で、50mを超えるものも少なくない。
海外ではアメリカ・西海岸の山地に生育するセコイア、オーストラリア・タスマニア島のセイタカユーカリ、ニュージーランドの固有種カウリ、アフリカ大陸原産のバオバブなどが大きく成長する種。世界一の高木とされるのはアメリカのセコイア(レッドウッド)の「ハイぺリオン」で、高さ約115mを誇る。
ジャイアントセコイア(写真左)と福岡・篠栗九大の森にあるヌマスギ(写真右)
巨樹に共通しているのは、「長寿」だということ。木は人間とは違い、生きている限り成長を続けるそうだ。木が枯れる原因は、生物的な要因(樹種が持つ性質、病原菌の感染)と非生物的要因(台風や降水量、土壌)が挙げられる。日本の温帯、亜高山帯では台風などの非生物的要因で枯れてしまうことが多く、北米の針葉樹林では病原菌の感染など生物的要因が多い。
寿命が長いといわれる種はジャイアントセコイアやセイタカユーカリ。驚くことに、これらの種は樹齢を重ねるほど成長が加速する傾向にある。年を経るごとに樹冠(樹木上部)が茂り、木の成長を促すのだという。
木の大きさには「環境」の要因も大きい。同じ樹種、樹齢であっても、日射量や栄養、水分量などで成長の度合いが違う。また、それらが豊富なら最適とも限らない。
たとえば屋久島の環境は特殊で、一見、恵まれた環境からはほど遠い。年間の降水量は4000〜10000ミリと多雨。花崗岩の台地であることから土壌の栄養分が少なく、木の成長に適さない。そのために、屋久島のスギは成長する速度が非常に遅く、その分、材が強固になる。また桁外れの多雨から自らを守るために、通常のスギの6倍以上の樹脂分を溜め込む。この樹脂は防腐・抗菌・防虫効果もあり、内側から木を保護しているので、たとえ倒れたとしても腐らないといわれる。この特殊な環境こそ屋久島のスギが長生きするゆえんだ。
その土地により環境は大きく異なるが、巨樹はいろんな要因があって成り立つ。生きている限り何百年も何千年も成長を続ける巨樹。科学的に物事を見てみると、旅はもっとおもしろくなる。
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