なぜクラブツーリズムの旅は“安全”に“安心して”楽しめるのか。
元気に健やかな生活を送ることに良い影響を与えているのか。
その理由を連載コラムで皆様にお届けしていきます。
※スマート・エイジングとは、「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」を指します。東北大学が2006年から提唱している少子化・超高齢社会における新しい概念で、東北大学が商標を有しています。※登録番号 第6127103号
【第21回】
コロナ禍で身に着いた習慣行動を変えるには?
クラブツーリズムが今年3月に会員の皆さん向けに実施したアンケートに「コロナ禍の2年間を振り返って、どんな変化がありましたか」という設問がありました。その回答の上位は次の通りです。
1.外出機会が減った
2.太った・体重が増えた
3.テレビやYouTubeを見る時間が増えた
1の理由として最も多いのは「旅行に行けなくなったため」です。
クラブツーリズムの会員さんなので当然ですね。
また、旅行以外に「外食機会」や「グループでの食事会」が減ったという意見も多く見られました。
さらに、外出を控えた理由として「持病(基礎疾患)がある」を挙げている場合もありました。基礎疾患があると重症化リスクが高くなるという認識が広まっているためと思われます。
「2.太った・体重が増えた」理由として多かったのは、「ビールやワインなど家での酒量が増えた」「お菓子など甘いものを食べる機会が増えた」です。
例えば、ビール会社は業務用需要が減ったため、家飲み需要を喚起するためテレビコマーシャルに注力しました。「3.テレビやYouTubeを見る時間が増えた」にあるようにテレビを見る時間が増えているため、影響を受けやすくなったとも言えます。
また、旅行機会が減ったため、旅行で出費する代わりに少し高価なデザートなどを購入したという人も多いようです。
1.外出機会が減った
2.太った・体重が増えた
3.テレビやYouTubeを見る時間が増えた
実はこれらの回答上位3つは、既に公表されている他の調査結果(連載第11回で紹介)と同様で、目新しい結果ではありません。
ところが、今回のアンケート結果で気になった点があります。
それは自由コメント欄に「外出がおっくうになった」「出かけるのが面倒に感じる」「何をやるにも面倒くさいが先に立つようになった」といったコメントが非常に多く見られた点です。
こうしたコメントは、「意欲」や「やる気」の低下を表しています。
原因として第一に考えられるのは、「認知機能が低下」したためです。
運動不足や会話不足は大脳の前頭葉にある意欲の中枢の機能低下を促します。また、連載第11回で説明の通り、テレビやYouTubeを見る時間が増えると大脳の前頭前野に抑制がかかり、習慣化すると認知機能が低下します。
原因として第二に考えられるのは、外出しないことが「習慣行動化」したためです。
連載第19回で説明の通り、目的行動の繰り返しによって、その価値は私たちの脳に「学習」され「記憶」されていきます。
コロナ禍での「ステイホーム」という目的行動が繰り返された結果、外出しないことが「習慣行動」となり、無意識的に選択するようになったのです。
では、こうした「外出がおっくう・面倒」を切り替えるにはどうすればよいのでしょうか。
対策その1は、「意欲」や「やる気」を高める行動をとることです。具体的には次がおすすめです。
1) 目標設定型の生活にする
2) テレビ、YouTubeの視聴時間を減らす
3) 脳を使う機会を増やす
4) 運動する
1)は連載第10回でお話しした脳の報酬系を活発にしてドーパミンの分泌を促す生活スタイルです。2)および3)は連載第8回でお話しした脳のトレーニングを行うことです。4)は連載第4回でお話ししたサーキットトレーニングもよいですし、一日30分ウォーキングするのでも十分です。
対策その2は、外出することを「習慣行動化」することです。そのためには、最初は外出を「目的行動」として意識して行うことが必要です。
ここで注意したいのは、最初は決して無理しないことです。第19回でお話しした通り、目的行動を習慣行動化するにはコツがあるからです。
ある目的行動を行うかどうかの判断の際、私たちは、①その行動による価値・恩恵がどの程度あるのかと、②その行動を取るための手間やコスト、時間、心的エネルギーなどがどの程度必要かを天秤にかけ判断します。
したがって、①が大きく、②が小さいほど、その目的行動は実施されやすく、継続されやすくなります。
長らく行動自粛していたため、外出がおっくうに感じる人は、外出をするための心的エネルギーが大きくなっていると思われます。したがって、負担感のない範囲で少しずつ行動していくのがよいです。
これらを総合的に考慮すると、最も手軽で取り組みやすいのは、ツアー参加型の日帰り旅行でしょう。自分で交通手段の手配や行先の手配は不要、運転も不要。一人ではないので会話機会も自然に生まれます。
日帰り旅行を数回行って、外出機会に慣れてきたら、もっと長期間の旅行に行くのもよいでしょう。要は取り組みやすい方法から徐々に外出慣れをしていくことです。
クラブツーリズムの会員の皆さんはもともと旅行が好きな方なので、普通の方よりも「意欲」や「やる気」は高まりやすいと想像しています。
◆ここがポイント◆
・クラブツーリズム会員を対象に実施した「コロナ禍の2年間の変化を聞いたアンケート」で、「外出がおっくう・面倒」というコメントが目立った
・この改善策の一つ目は、「意欲」や「やる気」を高める次の4つの行動をとることです。①目標設定型の生活にする、②テレビ、YouTubeの視聴時間を減らす、③脳を使う機会を増やす、④運動する
・改善策の二つ目は、外出を「習慣行動化」することです。ツアー参加型の日帰り旅行などが最も手軽で取り組みやすい
【これまでの復習】
今回のコラムは、これまでのおさらいになっています。
記事中リンク先のバックナンバーを読み返し、実生活に活かしてゆきましょう。
連載コラム
村田裕之先生
東北大学ナレッジキャスト㈱常務取締役
東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター特任教授
東北大学感染症共生システムデザイン学際研究重点拠点委員
新潟県生まれ。87年東北大学大学院工学研究科修了。
日本のシニアビジネス分野のパイオニアで常に時代の一歩先を読んだ事業に取り組む。経済産業省や内閣府委員会委員など多くの公職を歴任。高齢社会研究の第一人者として著書も多数。近著「スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣」(徳間書店)が好評。
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