旅と人生を楽しむ スマートエイジング®術 旅と人生を楽しむ スマートエイジング®術

なぜクラブツーリズムの旅は“安全”に“安心して”楽しめるのか。
元気に健やかな生活を送ることに良い影響を与えているのか。
その理由を連載コラムで皆様にお届けしていきます。

※スマート・エイジングとは、「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」を指します。東北大学が2006年から提唱している少子化・超高齢社会における新しい概念で、東北大学が商標を有しています。※登録番号 第6127103号

【第9回】

旅行可能寿命を延ばす秘訣

現在はコロナ禍で旅行がしづらい環境にあります。しかし、ワクチン接種が進んで感染者数が減少し、政府の行動制限が緩和されれば旅行に行きたいという方は多いでしょう。

ところが、外出自粛の生活スタイルが長く続き、特に年配の方で健康状態が悪化している方が少なくないようです。いざ政府の行動規制がなくなった時に元気に旅行できるように今のうちに健康状態を改善しておきたいものです。

「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をいいます。厚生労働省によると、日本人の健康寿命は男性で72.14年、女性で74.79年(2016年)となっています。

言い換えると、おおむね男性では72歳、女性では75歳を区切りに健康上の理由で日常生活が制限されるといえます。この背景をデータで見てみましょう。

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図表1は年齢階級別の要介護・要支援認定率です。これを見ると70歳から74歳では6.1%ですが、75歳から79歳では12.9%と倍増します。

さらに80歳から84歳では28.1%と急増し、85歳から89歳では50.3%とその年齢層の人口の半分以上に及ぶことがわかります。

これより上述の年齢を過ぎると要介護状態になる方の割合が急増することが容易にお分かりいただけると思います。

次に図表2は介護や支援が必要になった主な原因です。

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要介護状態になる原因の一番目が「認知症」です。二番目が「脳血管疾患」、つまり脳卒中です。認知症の原因疾患の約3割は脳卒中ですので、脳卒中が要介護状態になる原因の最上位といっていいでしょう。

脳卒中には主に脳梗塞、脳出血、くも膜下出血があります。実は私の母も2010年の春に脳梗塞で倒れました。幸い言語中枢は無事で、会話には大きな支障がありませんでしたが、右足に麻痺が残り歩行が難しくなりました。

数年前に自力での歩行が困難になり、現在は介護施設に入所しています。母が倒れてから私にとって介護の話はもはや他人事ではなくなりました。

原因の三番目が「高齢による衰弱」、四番目が「骨折・転倒」、五番目が「関節疾患」です。関節疾患は、「運動器障害」と呼ばれ、近年は「ロコモティブシンドローム」とも呼ばれています。

運動器とは、体の運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称です。歳をとるにつれてこうした運動器に不具合が出てきます。また、骨折・転倒は運動器障害の結果、起こることが多いものです。

ここまでの話で明らかなように、要介護状態になる原因の上位は、脳と運動器に関わるものです。ということは、これらを健康に維持できれば、かなり多くの場合で要介護状態にならずに過ごせるということです。

対策については本連載でお話ししてきましたので改めて実施してください。脳卒中の原因の多くは「生活習慣病」です。これは、糖尿病・脂質異常症・高血圧・高尿酸血症など、生活習慣が発症原因に深く関与している病気の総称です。

この解消策としてまずお勧めしたいのは「有酸素運動」です。一番手軽なのはウォーキングです。一日30分程度で十分です。

またウォーキングに加えて、筋トレもお勧めです。ウォーキングだけでは転倒・骨折予防に有効な腹筋・背筋を含む「体幹部」の筋肉はあまりつかないからです。

そして脳を鍛えるトレーニングも重要です。これは前回お話ししたことを実践してください。

コロナ禍の収束を見据えて、健康状態を改善し、旅行可能寿命を延ばしましょう。


参考図書:スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣(徳間書店)

◆ここがポイント◆

・旅行可能寿命を延ばすためには、要介護状態にならないよう、健康状態を維持・改善することが大切である
・「脳」と「運動器」の健康維持が介護予防の要である

<対処法>
・一日30分程度の有酸素運動をする
・筋トレで、腹筋・背筋を含む体幹部と下肢の筋肉を鍛える
・脳を鍛えるトレーニング(具体的には、①大きな声で音読する、②簡単な計算を素早く解く、③手で書く、④スパン課題、⑤Nバック課題などに取り組む)

【これまでの復習】
認知症予防策や脳トレについては、連載第8回をお読みください。

30分のサーキット運動プログラムを活用した「筋トレ」には、「抑制能力(がまんする力)」と、「活力(ポジティブな気分)」が即時的に向上させる効果があることが、女性専用フィットネス《カーブス》と東北大学加齢医学研究所との共同研究で学術的に明らかに。連載第4回もお読みください。

連載コラム

村田裕之先生

東北大学ナレッジキャスト㈱常務取締役
東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター特任教授
東北大学感染症共生システムデザイン学際研究重点拠点委員

新潟県生まれ。87年東北大学大学院工学研究科修了。
日本のシニアビジネス分野のパイオニアで常に時代の一歩先を読んだ事業に取り組む。経済産業省や内閣府委員会委員など多くの公職を歴任。高齢社会研究の第一人者として著書も多数。近著「スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣」(徳間書店)が好評。

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