なぜクラブツーリズムの旅は“安全”に“安心して”楽しめるのか。
元気に健やかな生活を送ることに良い影響を与えているのか。
その理由を連載コラムで皆様にお届けしていきます。
※スマート・エイジングとは、「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」を指します。東北大学が2006年から提唱している少子化・超高齢社会における新しい概念で、東北大学が商標を有しています。※登録番号 第6127103号
【第10回】
達成したら嬉しい目標とご褒美を作って、毎日生きるハリアイをつけましょう。
元気を生み出す「報酬系」と「ドーパミン」
私たちは何かを達成したときや誰かに褒められたとき、嬉しく感じたり、もっと頑張ろうという気持ちになったりします。
実はこういうときに、脳内の「報酬系(ほうしゅうけい)」という神経ネットワークに「ドーパミン」という神経伝達物質が放出され、私たちに「元気」や「やる気」「わくわく感」を感じさせます。
ドーパミンは、かつて「快楽物質」と呼ばれていました。しかし、報酬系に詳しい東北大学の筒井健一郎教授によれば、ドーパミンには「元気」や「やる気」、「求める気持ち」を生み出す役割があると考えられています。
どんな時にドーパミンが分泌される?
ドーパミンが放出されやすくなるのは、次の3つの場合です。一つ目は、不確実な嬉しい出来事を期待しているとき。例えば、宝くじを買って、当たるかどうかはわからないけど、当たった場合のことを考えてワクワクしているようなときです。
二つ目は、予期していなかった嬉しい出来事が起きたとき。例えば、宝くじが当たったとき、万馬券を取ったときです。まさか当たると思ってなかったものが実際に当たったときです。
三つ目は、嬉しい出来事が確実に起きると予想されたとき。例えば、会社を退職して、3カ月後に念願の海外旅行に行くと決めて、すでにチケットも予約してあり、その日が来るのを待っているときで”もういくつ寝るとお正月”型ともいえます。
毎月の給料日やボーナスの支給日、年金支給日が近づいて待っているときも同じです。ちなみに、コンビニでは年金支給日が近づくと大きなサイズのアルコール飲料の売れ行きが増えますが、これも同じです。
日常生活でのドーパミンの増やし方
これらの原理を応用すると、日常生活において「やる気」の素になるドーパミンの放出を「意図的」に促すことができます。
その一つは「不確実な嬉しい出来事を期待する」の応用で「目標設定型」の生活をすることです。実現するかどうかはわからないが、実現したら嬉しいという目標を設定した生活。つまり、明日、1週間後、1カ月後、1年後が楽しみになるような生活です。
例えば、聖路加国際病院の名誉理事長、故日野原重明先生は手帳に常に5年先の予定を具体的に書き込んでいました。5年後の何月何日の何時から日比谷公会堂で自分の誕生会を全国から来た3千人の前でやる、と書くのです。
5年先に生きているかどうかわからないけど、実現したら嬉しいことです。こういう習慣を続けてきたことで、日野原先生は100歳を超えても、いきいきしていました。
こうした「目標設定型」の生活だと、脳内の報酬系が活性化しやすくなります。ただし、目標設定のコツは、今の自分の能力より「少しだけ高い」水準にすることです。高すぎても低すぎてもいけません。
自分の今の能力よりやや高い水準に目標設定すると、達成のための行動が継続しやすく、達成すれば喜びは大きくなります。
もう一つ、目標設定は「具体的」にすることが重要です。「近い将来にどこか美しいところに行く」という漠然としたものはダメです。
例えば「来年の2月10日にウィーンの楽友協会大ホールでウィーンフィルのコンサートを聴く」のように、具体的ではっきりした目標にすることが肝心です。
また、設定する目標は「達成したら嬉しい、ワクワクする」ものが重要です。設定する目標が義務的なもので、達成しても楽しくない「ノルマ」だと逆にストレスを感じ、報酬系は活性化しません。
コロナ禍が落ち着いたら、達成したい嬉しい目標とご褒美を作って、毎日生きるハリアイをつけましょう。
◆ここがポイント◆
・達成したら嬉しい「目標設定型」の生活を心がけると毎日の生活に元気が出る。
・設定する目標は具体的に。今の自分の能力より「少しだけ高い」水準に。
<対処法>
・設定する目標は「達成したら嬉しい、ワクワクする」ものが重要。設定する目標が義務的で、達成しても楽しくない「ノルマ」だと逆にストレスを感じ、報酬系は活性化しない。
【これまでの復習】
「具体的な目標を設定する気分が上がらない…」という方は、まずは、セロトニンを増やす生活をこころがけましょう。くわしくはこちらをお読みください。
連載コラム
村田裕之先生
東北大学ナレッジキャスト㈱常務取締役
東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター特任教授
東北大学感染症共生システムデザイン学際研究重点拠点委員
新潟県生まれ。87年東北大学大学院工学研究科修了。
日本のシニアビジネス分野のパイオニアで常に時代の一歩先を読んだ事業に取り組む。経済産業省や内閣府委員会委員など多くの公職を歴任。高齢社会研究の第一人者として著書も多数。近著「スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣」(徳間書店)が好評。
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