クラブツーリズム TOP > 「旅の友」web版【中部・東海版】 > 科学で旅はもっとおもしろい。 第7回 種の旅
探究心や好奇心は、いつも胸に抱いていたいもの。
旅のあれこれを科学的にひも解いて、旅をもっと楽しもう。
野山を歩いていると、ハギやススキに野菊など、秋らしい草花が私たちを出迎えてくれる季節になった。秋の草花は、寒さに弱いものが多い。秋のうちに花を咲かせて種を作り、寒さに強い種の姿で冬を越すためだ。植物の種に注目してみると、さまざまな自然環境の中で生き残るために、個性的な形になったものや鮮やかな色のものなど、個々の環境に合わせて賢く生き抜いているものばかり。今回は、そんなユニークな「種」に注目してみよう。
子孫を残すための種だが、植物は自分で移動をすることができないため、何かの力を借りることがほとんどだ。大きく分けると、風の力を借りる風散布、海や川などで流される水散布、自らが種を強く弾き飛ばす自発的散布、ただ下へ落ちるだけの重力散布、動物にくっついたり、実を食べてもらい、のちに体外に糞として散布される動物散布など。
動物散布の中には、象にしか噛み砕けないような硬い殻を持つ種など、特定の動物だけに頼るものもある。この場合はその動物が絶滅すると、植物も絶滅するというリスクもある。
私たちの身近にある、よく目にする植物は、どのような方法で子孫を残そうとしているのか。普段の散歩途中や旅先で、花と共に種を観察するのも、面白いだろう。種はどんな旅をしているのだろうか。空を飛び、海を越え、動物に飲まれ、時には時空まで超える。それはきっと、大冒険に違いない。
へら状の葉っぱの下に果実がぶら下がるヘリコプター式の飛行術をもつボダイジュ。6月ごろに花が咲き、10月ごろに実を包む葉が枝を離れる。風が吹き渡るとき、パラパラと舞う姿は壮観。
枝に円柱状に赤い花をつける姿が、瓶を洗浄するブラシのように見える、オーストラリア原産の常緑樹。実(写真左)は5〜8o状の球形で硬質。木が生きている限り種は落ちず、山火事で枝が枯れた時だけ落ちる。山火事を利用する植物はほかにユーカリやバンクシアなどがある。
空き地や河川敷に生える雑草。種の周り中にとげがあり、服などに付くとなかなか取れない。オナモミの仲間には、刺さると抜けない、粘着力があり取れない、ピンのように挟み込むなど、多様な特徴をもつものがある。
北海道から九州まで、幅広く分布するオニグルミ。堅い殻をもち、リスやネズミが厳しい冬を越すために地面に穴を掘り蓄える。春になると、食べ残されたり、忘れられたオニグルミが発芽する。
5本の棒状の花が星形に開き、中心の種の色とのコントラストが見ごとなクサギ。赤と藍色のツートンカラーは鳥の目に強烈な印象を与える。鳥が実を食べ、遠くへ種を運んでくれる。