なぜクラブツーリズムの旅は“安全”に“安心して”楽しめるのか。
元気に健やかな生活を送ることに良い影響を与えているのか。
その理由を連載コラムで皆様にお届けしていきます。
※スマート・エイジングとは、「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」を指します。東北大学が2006年から提唱している少子化・超高齢社会における新しい概念で、東北大学が商標を有しています。※登録番号 第6127103号
【第7回】
55歳を過ぎたら毎日血圧を測りましょう
血圧とは何か?
血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことで、通常は上腕動脈の圧力を意味します。血圧の高さは、心臓が血液を押し出す力と血管の拡張の度合い(弾力性)で決まります。
心臓は収縮と拡張を繰り返して血液を送り出しています。心臓の収縮時に動脈の血圧が最高に達したときの値を「最高血圧または収縮期血圧」、心臓の拡張時に最低に達したときの値を「最低血圧または拡張期血圧」と呼びます。
診察室でのくり返しの測定(診察室血圧)で最高血圧が140mmHg以上、あるいは最低血圧が90mmHg以上であれば、高血圧と診断されます。
一方、近年は家庭で測定した血圧(家庭血圧)が、診察室血圧よりも疾病リスクを予測するのに優れているとされ、高血圧の診断に家庭血圧も用いられるようになりました。
家庭血圧の場合、最高血圧が135mmHg以上、あるいは最低血圧が85mmHg以上で高血圧と診断されます。
日本高血圧学会高血圧治療ガイドラインによれば、家庭血圧と診察室血圧による診断が異なる場合は家庭血圧による診断を優先するとされています。
高血圧はサイレント・キラー
血管の壁は本来弾力性があります。しかし、血圧が高い状態が長く続くと、血管はいつも張りつめた状態となり、次第に厚く、硬くなります。
これが高血圧による動脈硬化で、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患、心筋梗塞などの心疾患、大動脈瘤、眼底出血、腎硬化症などの原因となります。また高血圧状態が続くと心臓が肥大化して心不全になることもあります。
怖いのは動脈硬化や心臓肥大は自覚症状なしに進行することです。高血圧がサイレント・キラー(沈黙の殺し屋)と呼ばれるゆえんです。
実は要介護になる原因疾患の22%は脳血管疾患と心疾患です(図1)。また認知症の原因疾患の30%は脳血管疾患なので、高血圧による動脈硬化は要介護になる主要原因です。
高血圧の原因は何か?
高血圧症には「本態性高血圧症」「二次性高血圧症」の二種類があります。本態性高血圧症は原因の判らないものをいい、高血圧症の約90%がこれに入ります。遺伝的因子や生活習慣などの環境因子が関与しており、生活習慣病と言われ、次が原因と考えられています。
(1)過剰な塩分摂取
(2)肥満
(3)過剰飲酒
(4)精神的ストレス
(5)自律神経の調節異常
(6)運動不足
(7)野菜や果物(カリウムなどのミネラル)不足
(8)喫煙
二次性高血圧症は血圧上昇の原因となるはっきりした病気があるものをいいます。この中には、腎動脈狭窄、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫など外科手術により治療が期待できるものもあります。
体重と同様に血圧も毎日計る
高血圧症を改善する、または予防するには上述の原因に即した対策が必要です。それ以前に重要なことは、自分の血圧がどの範囲にあるのかを毎日計測して傾向を把握することです。
現状では年に一回の健康診断で計測する程度の方も多いのではないでしょうか。若い頃は「自分の血圧はいつも正常値だ」と思っていた方も50代後半に計測したら予想外に高血圧になっていて驚く人が少なくありません。
毎日朝または夜に体重計に乗る方は多いと思います。これと同様に、55歳を過ぎたら毎日血圧を測ることをお勧めします。
家庭用の血圧計には、「上腕式(カフ式)」「上腕式(アームイン式)」「手首式」の三種類があります。お勧めは「上腕式(カフ式)」か「上腕式(アームイン式)」(写真1、2)です。
「手首式」は計測値がばらつきやすいのでお勧めしません。また、腕時計型のものはオムロン製のものを除いて測定原理に正確性が欠けるためやめた方がよいでしょう。
◆ここがポイント◆
・高血圧による動脈硬化は、自覚症状なしで進行する
・動脈硬化は、脳血管疾患や心疾患など様々な病気の原因であり、要介護になる主要原因である
<対処法>
・高血圧になりやすい生活習慣を知り、改善策を理解する
・55歳を過ぎたら、毎日血圧を測定して自分の血圧傾向を把握する
【これまでの復習】
動脈硬化は、「高血圧」「脂質異常症」「喫煙」「肥満」「ストレス」などの危険因子を持つ人ほど要注意。食事改善には、昭和50年代の食事「スーパー和食」も有効です。
連載第3回もお読みください。
連載コラム
村田裕之先生
東北大学ナレッジキャスト㈱常務取締役
東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター特任教授
東北大学感染症共生システムデザイン学際研究重点拠点委員
新潟県生まれ。87年東北大学大学院工学研究科修了。
日本のシニアビジネス分野のパイオニアで常に時代の一歩先を読んだ事業に取り組む。経済産業省や内閣府委員会委員など多くの公職を歴任。高齢社会研究の第一人者として著書も多数。近著「スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣」(徳間書店)が好評。
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