旅と人生を楽しむ スマートエイジング®術 旅と人生を楽しむ スマートエイジング®術

なぜクラブツーリズムの旅は“安全”に“安心して”楽しめるのか。
元気に健やかな生活を送ることに良い影響を与えているのか。
その理由を連載コラムで皆様にお届けしていきます。

※スマート・エイジングとは、「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」を指します。東北大学が2006年から提唱している少子化・超高齢社会における新しい概念で、東北大学が商標を有しています。※登録番号 第6127103号

【第19回】

健康管理を続ける秘訣

前号で血圧などの健康指標を「見える化」して、日常的に把握しておくことの有用性をお話ししました。しかし、恐らく多くの方にとっての壁は「それを毎日継続すること」でしょう。本号では健康管理を続ける秘訣をお話しします。

私たちが取る行動には「目的行動」と「習慣行動」があります。「目的行動」は、ある目的を達成するのにそれによる恩恵と手間・時間などのコストから価値判断によって選択する行動です。

目的行動の繰り返しによって、その価値は私たちの脳に「学習」され「記憶」されていきます。こうして価値が記憶されると、やがてその行動を無意識的に選択するようになります。これが「習慣行動」です。

例えば、休日にレジャーに出かけるために電車の駅に行って、うっかり、レジャーのための方向とは逆方向の職場に向かう電車に乗ってしまったことはありませんか?これは、無意識的な習慣行動が、意識的な目的行動よりも優先されてしまった例です。

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そもそも、必ずしも楽しいことばかりではない職場に、毎日朝早く起きて、出勤できるのは、なぜでしょうか?その理由は、通勤という行動が「習慣行動化」しているからです。

もっとも今はコロナ禍でテレワークが増えたため、通勤しないことが習慣行動化している人が多いかもしれません。

ここまでの話でお伝えしたいことは、健康管理を毎日続ける秘訣は、健康管理という「目的行動」を「習慣行動」に変えることです。

では、どうすれば習慣行動化できるのか?ある目的行動を行うかどうかの判断の際、私たちは、①その行動による価値・恩恵がどの程度あるのかと、②その行動を取るための手間やコスト、時間、心的エネルギーなどがどの程度必要かを天秤にかけ判断します。

したがって、①が大きく、②が小さいほど、その目的行動は実施されやすく、継続されやすくなります。これを前回お話しした血圧測定を例に説明しましょう。

血圧測定は、毎日朝晩行うのがよいとされています。腕にカフを巻く方式がアームイン方式よりも計測のばらつきが少ないのでお勧めしますが、これを朝晩の2回実施するにはそれなりの時間的余裕が必要です。そこで、どちらか一回にすることで②を半分に減らせます。

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前回お話しした通り、測定値を手書きで紙に記録するより、測定器とスマホをブルートゥースで連携して保存すれば手入力の手間②が省けます。

また、この方法だと一定期間での血圧の傾向が把握できて安心感が増す、つまり①の価値が大きくなることは前回説明しましたね。

さらに、次の方の場合、①の価値はもっと上がります。

(1)高血圧による動脈硬化が原因の脳梗塞・心筋梗塞などを患ったことがある方
(2)家族・親戚など身近に脳梗塞・心筋梗塞などになった人がいる方

価値が上がる理由は、(1)の場合、病気発症による「精神的・肉体的苦痛を経験」しているため、再発予防の意識が高く、血圧管理の重要性・価値を強く認識しているからです。

(2)の場合は、脳梗塞・心筋梗塞などの病気が「他人事ではない」と自覚していて、血圧管理の価値を認識しているからです。

まとめると、自分にとっての①価値・恩恵が最大化され、②手間・コスト・心的エネルギーが最小化されるかによって、習慣行動化しやすいかが決まります。

言い換えれば、どういう場合が「自分にとっての最適点」なのかを見つけることが健康管理を続ける秘訣です。

◆ここがポイント◆

・健康管理を毎日続ける秘訣は、健康管理という「目的行動」を「習慣行動」に変えることである。
・習慣行動化するには、健康管理による①自分にとっての価値・恩恵を最大化する、②健康管理のために必要な手間・コスト・心的エネルギーを最小化すること。
・「自分にとって①と②の最適点」を見つけることが健康管理を継続する秘訣である。

【これまでの復習】
「習慣化」には、達成したら嬉しい目標やご褒美を用意するといった「脳内の報酬系の仕組み」を理解して、日常生活に取り入れることもポイントです。
連載第10回をお読みください

連載コラム

村田裕之先生

東北大学ナレッジキャスト㈱常務取締役
東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター特任教授
東北大学感染症共生システムデザイン学際研究重点拠点委員

新潟県生まれ。87年東北大学大学院工学研究科修了。
日本のシニアビジネス分野のパイオニアで常に時代の一歩先を読んだ事業に取り組む。経済産業省や内閣府委員会委員など多くの公職を歴任。高齢社会研究の第一人者として著書も多数。近著「スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣」(徳間書店)が好評。

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