国土の約20%以上を占めるといわれる北海道。雄大な自然が広がり、思わず写真を撮影したくなる絶景にあふれています。様々な野鳥や野生動物が生息しているので、森林や自然公園を散策しているとばったり遭遇することもあります。そこで今回は、写真撮影にもおすすめの野生動物を取り上げてみました。タンチョウやシマエナガ、キタキツネ、エゾリスなど、北海道ならではの様々な野生動物たちの魅力をお届けします。
写真撮影の旅・企画担当者がおすすめする北海道の動物の魅力
厳しい環境の中でも懸命に生きようとしている野生動物を見ると感動を覚えます。今回、道内の中で特に被写体としても人気のある野生動物を20種厳選してご紹介します。ぜひ旅行にカメラと望遠レンズを持ってお出かけください。四季折々の楽しみ方があります。
~撮影に際しての注意~
・動物の巣には近づかない 、見つけても追いかけ回さない
・音を立てたり、大声で話したりストレス負担をかけない
・匂いを発したり、餌付けをしない
No.01 タンチョウ
タンチョウとは、真っ白な羽毛に覆われた赤い頭頂部が特徴的な大型のツルのことです。絶滅が危ぶまれた時代もありましたが、地元の人の保護活動により個体数が回復し、現在は特別天然記念物に指定されています。同じ繁殖相手と生涯添い続ける特徴から、「夫婦円満の象徴」として愛されています。そんな希少なツルを撮影するなら、11月から3月中旬がおすすめです。オスとメスが「コー」「カッカッ」と大きな声で鳴きあう様子やのんびりと歩く姿、羽を広げた姿などを様々なシーンを撮影してみませんか。
基本情報
■エリア
釧路
■北海道での個体数
約1500羽
■おすすめの撮影時期
11月上旬~3月中旬
No.02 エゾシカ
エゾシカは北海道のみに生息するシカです。大人の体重はオスが約150㎏、メスが約80㎏、頭胴長はオスが約190㎝、メスが約150cmもあり、二ホンジカよりもかなり大型サイズ。白い斑点のある鹿の子模様は夏場だけで、冬は斑点のない灰褐色の毛に変わります。立派な角はオスだけに生えるもの。毎年春先には角が抜け落ち、春から夏にかけて生え変わり、秋に枝のような角が完成します。北海道に生息しているので、様々な景色を背景にしたエゾシカを撮影できるでしょう。
基本情報
■エリア
日高・十勝・釧路・根室
■北海道での個体数
約73万頭
■おすすめの撮影時期
通年
No.03 シマエナガ
真っ白な雪だるまのような外見から、「雪の妖精」とも呼ばれるシマエナガ。体はスズメの約3分の1程度と小さく、冬の寒さに対応するため、羽毛に空気を取り込んでふっくらした姿になります。スピーディーな動きも独特で、木から木、枝から枝へ、ぴょんぴょんと飛び移ります。生息地は北海道ですが、春から秋にかけては木の実や昆虫が豊富な森林で暮らします。冬が近づくと街路樹の樹液を採りに市街地へ出現することもあります。「チィ、チィ」、「ジュリジュリ」という鳴き声が聞こえたら、シマエナガを探してみませんか?
基本情報
■エリア
北海道全域
■おすすめの撮影時期
12月~2月
No.04 ナキウサギ
ナキウサギは、体長15cmほどの大きさでネズミのような外見ですがウサギの仲間です。氷河期時代、海水面が下がって地続きだったユーラシア大陸から、北海道に渡ってきたといわれています。「氷河期の生き残り」というだけあって、現在も北海道の冷涼な山岳地帯に生息。「ピィッ、ピィッ」と大きな声で鳴いて、仲間とコミュニケーションを図ります。冬眠はせず、秋の間に食料を集めて貯めこみ、巣穴で越冬するのが特徴です。ナキウサギは警戒心が強いため、離れて静かに探しましょう。
基本情報
■エリア
日高・夕張・北見
■おすすめの撮影時期
5月~10月
No.05 キタキツネ
北海道に生息するキタキツネは本州・四国・九州に生息するホンドギツネよりも大きく、足首・耳の裏が黒いのが特徴です。厳しい寒さに耐えるため、11月~3月中旬頃までは冬毛でモフモフとした姿になります。その時期にキタキツネを見かけたら撮影のチャンスです。アップで撮影するのはもちろん、雪景色の中でポツンとたたずむ引きのカットもおすすめです。また、2月下旬~3月上旬は繁殖期のため、オスとメスが2匹でいる可能性も高まります。
基本情報
■エリア
北海道全域
■おすすめの撮影時期
通年
No.06 ばん馬
ばん馬とは、ばんえい競馬の出走馬のこと。ばん馬の歴史は明治時代、北海道の開拓に農耕や木材運搬などの労働力だった馬を「ばん馬」と呼ぶようになったことがはじまり。やがて、ばん馬の競争が娯楽として誕生し、明治時代の終わりにはそりに重量物を載せて曳かせる競争に変わっていきました。また、ばん馬は、北海道原産と思われがちですが、海外の馬がルーツです。フランス原産、ベルギー原産など3つの品種を元に改良を重ねられ、体重はサラブレッドの約2倍もあります。その大きな姿を写真に収めるならば、帯広や日高がおすすめ。牧場で馬たちがのんびりと過ごす様子を間近に見学しましょう。
基本情報
■エリア
日高・帯広
■おすすめの撮影時期
通年
No.07 オオワシ
黒色の全身に、翼と足の白い羽毛と、オレンジ色のクチバシが特徴的なオオワシは、翼を広げると240cmにもなる大型の猛禽類です。極東地域にのみ生息し、ロシアカムチャッカ半島を繁殖地とするこの鳥は、1月から3月の間は越冬のために羅臼や、根室市風蓮湖に訪れます。海や湖沼の魚・水鳥・海獣を補食し、針葉樹や広葉樹の林をねぐらとしています。また、オオワシは天然記念物であり、絶滅危惧Ⅱ類に指定され保護対象となっています。オオワシを撮影する場合は、観光船などを利用してみるのもおすすめです。
基本情報
■エリア
羅臼・根室
■北海道での個体数
約800~約1500羽
■おすすめの撮影時期
1月中旬~2月頃
No.08 オジロワシ
褐色の体に黄色いクチバシと、白い尾羽を持つオジロワシ。オオワシと同様に絶滅危惧Ⅱ類に分類される天然記念物です。ユーラシア大陸北部に生息するこの渡り鳥は、冬の流氷とともに知床羅臼へ渡来。海岸や湖沼といった水辺の大木に営巣して、海産魚類や哺乳類の死肉を食べます。知床半島では40組のオジロワシのつがいの繁殖・留鳥が確認されており、積極的な保全活動が行われています。海岸では、流氷上に数10羽もの群れを見かけることがあり、たくましいオジロワシの姿を観察・撮影できるでしょう。
基本情報
■エリア
知床・羅臼
■おすすめの撮影時期
11月下旬~1月上旬
No.09 ヒグマ
日本では北海道にのみ生息するヒグマ。中でも知床は世界有数のヒグマ生息地です。オスの体長は2.0m、体重は400kgにもなるヒグマは、春から秋にかけて、漂着したアザラシやイルカ、イワシやカラフトマス、そして海鳥のひなを狙うため海岸に出没します。知床ではそのヒグマを観察するための観光船が運行されており、安全にヒグマと知床の自然を楽しむことができます。なお近年ではヒグマの被害が多数報告されているため、行政や地元団体はヒグマの正しい観察方法を呼び掛けています。
基本情報
■エリア
北海道全域
■北海道での個体数
12000頭
■おすすめの撮影時期
4月~9月
No.10 エゾモモンガ
エゾモモンガは、ユーラシア大陸に広く分布するタイリクモモンガの亜種で北海道にのみ生息する北海道の保護動物です。頬後部から尾の付け根まで広がる皮膜が特徴的で、両手両足を広げて50m以上もの距離をジャンプすることができます。樹上で生活しており、樹洞という木に空いた穴を巣にしてヤナギやシラカバを食べて生活しています。非常に繊細で夜行性のため観察することが難しい動物です。日没後や日の出前に撮影のチャンスを狙うとよいでしょう。
基本情報
■エリア
網走
■おすすめの撮影時期
通年
No.11 シャチ
シャチは8m~9mの大きな体格を持つ海棲哺乳類。よく水族館で見かけるシャチですが、北海道では野生のシャチをウォッチングできるスポットがあります。それはオホーツク海沖、知床半島と国後島に挟まれた根室海峡羅臼沖です。冬に流氷が流れつくこの海域には流氷と同時にプランクトンもやってきます。4月から7月になると流氷が溶け始めて、海にプランクトンが溢れ、それを求める魚達とともにシャチの群れが現れます。この光景は陸から見ることもでき、シャチが持つ社会性や活発な動きを間近で観察できます。
基本情報
■エリア
オホーツク海沖
■おすすめの撮影時期
5月~6月
No.12 マッコウクジラ
体長は20m、体長の2/3が頭で、潜水艦のような見た目をしているマッコウクジラ。メスと子供は赤道近くの温暖な海に生息し、オスは餌を求めて寒い海域を回遊する性質があります。深海で餌を採るマッコウクジラは、1度の潜水で45~60分潜り、つづいて10分間海面付近で呼吸をします。この時に見られる斜めに上がる潮吹きが特徴的。凪の日には、マッコウクジラ同士で鳴き交わしたり、休憩したりする姿を見られます。8月と9月、オホーツク海沖の水深2400mある根室海峡羅臼沖にマッコウクジラがやってきます。野生動物が活気づく時期でもあり、思いがけない一枚を撮影することができるかもしれません。
基本情報
■エリア
オホーツク海沖
■おすすめの撮影時期
8月~9月
No.13 ミンククジラ
ミンククジラは、オホーツク海沖で見られる体調8m前後の小型なクジラです。体の後方には、30㎝程の鎌型の背びれが付いています。潮吹は細いため見えないことが多いですが、3mほどの高さまで上がります。動きは敏しょうで、餌を追いかけているときや遊泳中に、イルカのように前方に飛び出すこともあります。ミンククジラがよく見かけられるのは、根室海峡。4月~6月にクルージング中の発見率が高いため、撮影におすすめです。
基本情報
■エリア
オホーツク海沖
■おすすめの撮影時期
5月~7月
No.14 サクラマス
サクラマスは、サケの一種。基本的には海で回遊しますが、たっぷりと栄養をとって成長し、産卵のために産まれた川に戻ってきます。サクラマスは北海道で見られますが、中でも清里町にある斜里川の「さくらの滝」が有名です。6月から8月にかけて、産卵をするため上流へ登ろうと、3mほどの滝をジャンプする様子を見られます。しかし、滝登りに成功して上流にたどり着くのはわずか1割程度だとか。登れなかった残りのサクラマスは、滝の下で産卵するといいます。産卵期が近づく8月頃は、桜色に変化する姿も見どころです。
基本情報
■エリア
北海道全域
■おすすめの撮影時期
6月~8月
No.15 アカショウビン
アカショウビンは、カワセミの仲間です。カワセミとは全く異なり、赤褐色の羽毛に鮮やかな赤色のくちばしが特徴です。森の中の暗い場所に生息し、両生類や爬虫類などを捕食しています。夏鳥として広葉樹林に現れ、枯木に穴を掘って巣を作ります。アカショウビンの生息地は全国に分布している反面、北海道での生息数は減少傾向にあり、絶滅危惧Ⅱ類に指定された、なかなか出会う機会のない野鳥です。
基本情報
■エリア
大沼
No.16 シマフクロウ
シマフクロウは、全長約70cm、翼を広げると約180㎝にも大きさのフクロウです。オスはヴーヴー、メスはヴォーと響く低い鳴き声が特徴です。アイヌの人々は「コタンコロカムイ(村を守る神)」と呼び、崇めてきました。シマフクロウは針葉樹と広葉樹が混在する森に棲んでいますが、国の天然記念物で、絶滅危惧種に指定されていることから、大切に保護されています。シマフクロウの環境を守るためにも観察施設などで観察するのがおすすめです。
基本情報
■エリア
知床・根室・十勝
■北海道での個体数
約160羽
■おすすめの撮影時期
通年
No.17 クマゲラ
国の天然記念物でもあるクマゲラは、全長50㎝程度のキツツキ類です。北海道ほぼ全域に生息しているといわれていますが、滅危急種に指定されており、野幌などでは生育環境調査や保全活動が行われています。特徴は真っ黒な全身に、頭のてっぺんが赤い色をした個性的な姿。鳴き声も独特で、空を飛ぶときはコロコロコロと鳴き、木にとまるとキョーン、キョーンという甲高い鳴き声に変わります。撮影の際には、静かに観察しながら特徴的な動きや表情を狙ってクマゲラとの一期一会をカメラに収めてみませんか。
基本情報
■エリア
野幌
■おすすめの撮影時期
通年
No.18 エゾリス
エゾリスは北海道特有のキタリスの亜種です。道内に生息し、十勝地方では町中の樹林にも姿を見せることがあります。体長は20cmを超え、季節ごとに毛色が変わります。夏は茶褐色の短い毛なのでネズミのような見た目に。冬は灰褐色でふさふさの毛に変わり、耳の毛がピーンと伸びた姿がチャーミング。木の上に巣を作って生活をしており、木に上っている姿はよく見かけます。撮影するには昼間がおすすめですが、エゾリスの活動時間は季節によって変わります。冬から春は朝から、夏は日の出から日没まで、秋は昼間を狙うとよいでしょう。
基本情報
■エリア
北海道全域
■おすすめの撮影時期
通年
No.19 エゾタヌキ
北海道だけに生息するエゾタヌキ。外見は、本州・四国・九州に生息するホンドタヌキとほとんど同じですが、エゾタヌキの場合は厳しい寒さに備えて冬支度をするのが特徴です。秋になると皮下脂肪をたっぷり蓄えて体重が増加し、冬はモコモコの毛をまとって丸々とした姿に。暖かくなるにつれ行動が活発になり、夏毛に生え変わっていくため、ほっそりとした体つきになります。森林部に生息し、夜行性でもあるので、野生のエゾタヌキとの出会いは運次第。見かけたときは、驚かせないようそっと撮影しましょう。
基本情報
■エリア
日高・夕張・北見
■おすすめの撮影時期
通年
No.20 エゾクロテン
エゾクロテンはイタチ科の仲間で、体長約40~50cmの細長い体と約15~20cmもの長いしっぽが特徴です。漢字で「黒貂」と書きますが黒い姿をしておらず、夏毛はこげ茶色、冬毛はクリーム色が目立ちます。可愛らしい顔に似合わず、キタキツネと戦ったりする獰猛なハンターです。森林や樹林に生息しており、昼夜問わず活動しているといわれています。警戒心が強いため、残念ながら人前には滅多に現れません。北海道の森林や樹林に生息しているので、運よく見かけたときは、愛嬌たっぷりの姿を撮影してみてください。
基本情報
■エリア
十勝
■おすすめの撮影時期
通年
写真撮影の旅スタッフが選んだ野生動物をお楽しみいただけましたか?北海道はまさに野生動物の宝庫。動物たちのいきいきとした生態を見られるのが魅力です。北海道にしか生息していない動物も多く、天然記念物や絶滅危惧種も共存しています。運よく旅の道中で出会ったときには、近寄ったり、騒いだりしないで撮影しましょう。
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